学長就任あいさつ

関根郁夫

この度、東京医療学院大学第2代学長に就任しました関根郁夫です。本学を創設した皆様の志を継承する責任の重さに身が引き締まる思いです。佐久間前学長をはじめ、教職員の皆様のご努力はもちろんのこと、学生の精進、地域や様々な関係各位のご支援を賜り、今日の本学があります。皆様に敬意を表しますとともに、心より感謝申し上げます。

私は、第2代学長として本学創設の志を受け継ぎ、さらに発展させ、本学が100年、200年と存続するよう本学の基盤を一層充実させることが、自らの使命と考えています。

私はこれまで高校を中心として、41年間にわたり小中高大の教育に携わってきました。文部科学省の高大接続システム改革会議などの各種会議委員として高大接続改革に関わったり、東京大学の大学発教育支援コンソーシアム推進機構と10年前からアクティブラーニングの一つである協調学習の協同研究を進めてきました。また、管理職や教育長として学校や教育行政の組織運営に取り組んだり、エビデンスに基づいた教育施策を推進するために埼玉県独自の学力・学習状況調査を立ち上げたりしました。これらの教育や組織運営の経験を本学の運営に活かすことが、私に求められているのではないかと感じています。

ご存じのように、大学をめぐる社会や経済の状況は大きく変化しつつあります。少子高齢化や人口減少伴う地域コミュニティの変質、財政の悪化や経済的格差の拡大、グローバル化や人工知能の発展に伴う産業や職業の変化、保護主義の高まりによる自由貿易の危機などに見られるように、社会の不安定要因が増大しています。本学は「人に優しく、社会に貢献できる人材の育成」を建学の精神としていますので、不安定化し、激変していく社会において「どのように人に優しくしていくか」「どのように社会に貢献していくか」を問い続けていくことが本学の存続につながり、本学の存在意義となると考えています。

現在、高大接続改革が進められていますが、その本質は学力保障です。高校や大学において生徒や学生にしっかりと学力をつけ、どこまで学力がついたかを証明しなさいという改革が行われています。本学での学力保障は国家試験合格であると言うことができますが、合格するためにどんな学力や姿勢を身につけたかが重要になります。国家試験合格はスタートラインであり、激動の時代を乗り切るには様々な力が必要となります。例えば、新たな職を開拓するチャレンジ精神や主体的に学び続ける意思、その人なりの学び方などを養う必要がありますし、「どのように人に優しくしていくか」「どのように社会に貢献していくか」を学生に4年間考えさせていく必要があります。今ある職の半分がなくなり、新たな職がどんどん生まれる時代です。医療系にもいずれ同様の波が押し寄せてくるでしょう。国家試験合格だけでも学生にとってはとても高いハードルですが、国家試験合格を学力保障とするだけでは、本学は時代の波に飲み込まれて消滅してしまうのではないかという危機感を持っています。

文部科学省はこれからの時代に求められる力について、生きる力や学力の3要素、主体的・対話的で深い学びなど様々に述べていますが、もっとも重要なものは「主体性」です。主体性を発揮するには自己肯定感が必要ですし、ポジティブシンキングやクリティカルシンキングなども必要です。学び方を体得できなければ、主体的に学び続けることは困難です。こうした力を大学入学までに身につけていなければ、最後の砦である大学がその任に当たらなければなりません。そのためにどうすれば良いかを皆さんと一緒に考え、行動してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

私には一つ夢があります。大学を学習する組織や働いてよかったと思える職場に作り上げるという夢です。一日の大半を働いたり、学んだりするこの東京医療学院大学という組織や場を、ここで過ごせて良かった、人生が充実していたと思えるようなところにするという夢です。この夢が叶えば、本学は100年、200年と存続することができると信じています。具体的にどうすれば良いかはまだ見えていません。皆さんと語り合い、アイデアを出し合い、本学をそのような組織や場に作り上げることができたらどんなに素晴らしいでしょうか。今はまだ私だけの夢ですが、皆さんに夢を共有していただけるよう努めてまいります。

本学にも様々な課題があることでしょう。しかし、私は課題解決よりも良さの共有を大切にしたいと考えています。皆さんが力を合わせて創設した東京医療学院大学には沢山の良さがあると思います。まずは、良さの確認と共有から始めさせていただきます。教職員一人一人と面談をさせていただき、学生たちからもお話を伺おうと考えています。皆さんからお時間をいただくことになりますが、ご協力をお願いいたします。

「人に優しく」するためにはコミュニケーション能力が必要です。教職員と学長のコミュニケーション、教職員同士のコミュニケーション、教職員と学生とのコミュニケーションを深めていくことで、本学の発展に努めてまいります。

最後になりますが、東京医療学院大学のさらなる発展に向けて、すべての皆様のより一層のご支援とご協力を賜りますよう、重ねてお願い申し上げます。

プロフイール

  • 1954年 埼玉県生まれ
  • 1978年 北海道大学理学部卒業、埼玉県立高校、埼玉県教育局に勤務
  • 2009年 埼玉県立浦和高校 校長
  • 2013年 埼玉県教育委員会 教育長
  • 2017年 十文字学園女子大学 特任教授
  • 2019年 東京医療学院大学 学長

公的活動

  • 文部科学省の高大接続システム改革会議他各種会議委員
  • 大学入試センター運営審議会委員他

平成31年度入学式式辞

はじめに

桜咲く春の佳き日、東京医療学院大学は、203名の皆さんを新たにお迎えすることになりました。新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。ようこそ東京医療学院大学にいらっしゃいました。東京医療学院大学を代表し、お一人おひとりを心から歓迎いたします。

これまで温かく見守り、支えてこられたご家族ならびに関係の皆さま、本当におめでとうございます。

日頃から御支援いただいております御来賓各位、保護者の皆さん、地域や各界の方々に祝っていただきながら、こうして第8回入学式を盛大に挙行できますことは、本学教職員一同の喜びとするところです。誠にありがとうございます。

新入生の皆さん方は、新しい学修環境への期待に胸を膨らませながらも、一方では不安も感じる門出ではないかと推察します。しかし、本学は教職員と学生との距離が近く、厳しさの中にも暖かく見守りながら指導・支援を行っておりますので、安心して思う存分、自ら選んだ分野における学びに邁進していただきたいと思います。

建学の精神と教育理念

本学の建学の精神は「人に優しく、社会に貢献できる人材の育成」であり、教育の理念を「仁愛・知識・技術」と定めています。これらを踏まえ、教育目標として「保健医療の専門職として求められる専門の知識と確かな技術を有し、かつ、コミュニケーション能力に優れた豊かな教養と高い倫理性を備え、人に優しく、保健医療を通して社会に貢献できる人材の育成」を掲げています。

分かり易く言えば、東京医療学院大学は「保健医療を通して社会に貢献できる人材の育成」という目標を達成するために「仁愛・知識・技術」を身につける教育を行っているということです。

こうした教育を行っている東京医療学院大学に入学した皆さんに4年間を通して考え続けていただきたい問いが2つあります。1つは「保健医療を通して社会に貢献するとは、自分にとってどういうことか」という問いです。もう1つは「仁愛・知識・技術を身につけるにはどうしたらよいか」という問いです。

この2つの問いを問うときに助けとなる考え方の1つとして、皆さんに「目的と目標」についてのお話をしておきたいと思います。

目的と目標を意識する

皆さんは昔話「ウサギとカメ」を知っていますか。ウサギから「歩みがのろい」と馬鹿にされたカメがウサギとかけくらべをし、かけくらべの途中で昼寝をしてしまったウサギにカメが勝つというお話です。

このお話には謎がいくつかあります。例えば、なぜカメは負けるとわかっているかけっこでウサギに挑んだのか。なぜウサギは競争している最中に昼寝をしてしまったのか、という謎です。

この謎は、「目的と目標」という視点から考えると解けます。

カメは「歩みは遅くても最後までやり遂げられることを示す」という目的を持ち、「山の麓まで走る」という目標を立て、目標を達成することで目的を果たしました。一方のウサギは「カメをからかう」という気持ちはありましたが、きちんとした目的も目標も持たず、「一眠りしてでも勝てる」とカメを馬鹿にして競争に負けてしまいました。

昔話「ウサギとカメ」から学ぶことは、明確な目的を持ち、目的を達成するために適切な目標を立てることの重要性です。つまり、「目的と目標を常に意識する」ことがとても大切なのです。

東京医療学院大学に入学した皆さんはウサギと異なり、理学療法士や作業療法士、看護師になるという明確な目標を持っています。では、何のために医療人材になるかという目的を明確に持っていますか。また、医療人材になるという目標を達成するためにどうすればよいですか。この2つの問いは、先ほどの2つの問いと同じ問いです。

この2つの問いの答えは自分で考えるしかありません。私たち教職員は皆さんが考えるお手伝いをしますが、答えを教えることはできません。最終的に自分で判断し、自分なりの答えを自分で決めるしかないのです。教えてもらおうとする依頼心は捨て、自分で学び考える主体性を育ててください。

ここでのキーワードは、「目的と目標を常に意識する」です。

目的を持つとは、どのような人生を送ろうとするかを決めること

皆さんが医療人材になろうとする目的は何でしょうか。目的は一人一人異なります。学生のうちであれば、安定した職や収入が得ることを目的としたり、国家資格を得ることを目的としたりしてもいいでしょう。しかし、国家資格を得て医療人材として職を得たときには、それらの目的は既に達成されています。そのとき、目的と目標を持てなければ、ウサギと同じようになります。新たな目的や目標を考える必要に迫られます。

医療人材になる目的を考えることは、「医療人材となって何をしたいのか」「どんな人生を歩みたいのか」あるいは「医療人材として社会にどのように貢献するのか」について考えることです。皆さんは自分の一生をどう生きたいですか。

ここで、現在の社会状況を見てみましょう。どう生きるかという問いに対する答えは社会の状況によって異なりますから、社会の状況をきちんと捉える必要があります。

ご存じのように、現在の社会状況は大きく変化しつつあります。少子高齢化や人口減少に伴い、地域コミュニティが変質し、人々の孤立化が進んでいます。老人の孤独死や虐待の増加は人々の関係性が薄れた結果の現れです。財政の悪化や経済的格差の拡大も問題です。グローバル化や人工知能の発展に伴い、産業や職業が大きく変化していきつつあります。皆さんがなりたいと思い描いている職業も変化していくでしょう。このように社会の不安定要因が増大しています。こうした状況の中で、皆さんは医療人材となってどんな人生を歩もうと考えますか。

本学は「人に優しく、社会に貢献できる人材の育成」を建学の精神としていますので、不安定化し、激変していく社会において「どのように人に優しくしていくか」「どのように社会に貢献していくか」を学生の皆さんに問い続けていきます。それが本学の使命であると考えています。皆さんは私たちの問いを受け、「自分はどのような人生を送ろうとするか」を考え続けてください。それが、医療人材になる目的を考えることにつながります。

ここでのキーワードは「どのような人生を送ろうとするか」です。

目標を達成するために自分を創造する

本学では「仁愛・知識・技術」を皆さんに身につけてもらおうとし、皆さんはそれらを身につけることで国家資格取得という目標を達成しようとします。目標を達成するためには、目的を明確に持つことと自分を創造することの2つが必要です。

ところで、国家資格取得という目標を達成するためには、本学教員から「仁愛・知識・技術」を教えてもらい、身につければよいと考えているとしたら、大きな間違いです。教えてもらうという受け身の姿勢では国家試験に合格することはできません。自分から学び、身につけるという主体性がなければ、国家資格の取得は達成できませんし、自分の人生を創ることもできません。大学4年間で、主体性を発揮する自分を創造してください。私たち教職員はそのお手伝いをします。

では、どうしたら主体性を発揮する自分を創造することができるでしょうか。自分創造のためには様々な力や姿勢を身につけていく必要がありますが、ここでは2つに絞ってお話ししましょう。

1つは、カメのようにコツコツと努力し続ける「継続力」を身につけることです。もう1つは普段のウサギのように集中してやり遂げる「切り替え力と集中力」を身につけることです。

継続力を身につけるには、いくつかの習慣やスキルを獲得することが必要です。

例えば、国家資格取得という大きな目標を小さな目標に分けて1つずつ達成するスキルが必要です。カメも山の麓という大きな目標を達成するために、「まず、あそこに見える梅の木まで」「次に見えてきた桜の木まで」というように少し頑張れば達成できる小さな目標を立て、それをクリアすることで、山の麓という大きな目標を達成したのです。皆さんも「小さな目標に分ける」というスキルをものにしてください。例えば、最初は「毎日の授業に欠かさず出席する」「授業に集中する」「毎日、予習・復習を行う」などの小さな目標を立てて、実行することです。そのとき、できた日には○、できなかった日には×をカレンダーに書き入れていくと、習慣となってきます。試してみてください。

継続しようと思うけれど、気分が乗らなかったり、疲れていたりしてできないこともあります。これを乗り越えないと「継続力」は身につきません。このとき覚えておいてほしいことがあります。「心を変えることはできないが、行動は変えることができる」という事実です。気分は暗くても、意識すれば大股で胸を張って歩くことができます。顔を上げて歩いていると、少し気分が晴れてきます。勉強したくないときには、自分でコーヒーを入れ、リラックスして飲んでみましょう。体を動かすことで、少しだけ勉強する気分になります。勉強する気分になったら、やれるものから始めてみましょう。

「自分にはできない」と悲観的に考えてしまい、自分を創造しようとしない人もいます。悲観的に考える自分を否定してはいけません。よくないと思える部分も自分の一部です。一部でも自分の存在を否定してはいけません。ところで、悲観的に考え、楽観的に行動することが最もよいと言われていますので、悲観的に考えることはいいことなのです。悲観的に考える自分を変えなくても、楽観的に行動することはできます。例えば、笑顔を無理して作ってみてください。少し楽しい気分になります。人は笑うから楽しくなるのです。

切り替え力と集中力は、日々の授業の中で鍛えてみてください。授業を受ける姿勢を意識して切り替えてみるのです。理解したことを表現する、理解したことを覚えるという作業を授業の中でやってみてください。ノートに自分の考えを書いたり、小声で言いながら覚えたりします。聞くだけ、書き写すだけでは、切り替えができません。様々な作業を行うと、気持ちが切り替わり、集中力が下がりません。

一日や一週間の中で気持ちを切り替える工夫もしてみてください。様々なアイデアを試してみてください。

自分創造のために必要な力の中の2つ「継続力」と「切り替え力と集中力」を紹介しました。自分を創造するためには、他にも、自己肯定感や挫折回復力、助けてもらう力など、様々な力があります。本学での学びを通して、様々な面から自分を創造してください。

ここでのキーワードは、「自分を創造する」でした。

新入生への期待

ここまで「建学の精神と教育理念」「目的と目標を意識する」「目的を持つとはどのような人生を送ろうとするかを決めること」「目標を達成するために自分を創造する」というお話をしてきました。どれだけ記憶に残っていますか。本日、皆さんは耳で聞いているだけですから、あまり記憶に残っていないのではないでしょうか。

記憶に残すためには、目、耳、口、鼻、手、足など全身を使って覚えることです。さらに、記憶は次第に薄れていくものですから、何度も記憶を呼び覚まし、定着させる必要があります。授業を受けたら、復習が大切な所以です。授業を受けたら、その日のうちにノートを見て学んだことを思い出し、3日後に見直し、1週間後、次の授業の前にも見直し、3週間後に見直すと記憶が定着します。こうした復習方法を身につけてください。

話を聞いてなるほどと思うだけでは身につきません。実際に行動しなければ身につかないのです。ここで1つだけ行動に移してみましょう。本学の建学の精神「人に優しく、社会に貢献できる人材の育成」は皆さんが医療人材として成長していく上でとても大事な精神ですから、しっかりと覚えておいてください。では、耳で聞いて口を使って覚えてみましょう。私の後について、大きな声でご唱和してください。

人に優しく
社会に貢献できる人材
いかがですか。耳で聞いているだけよりも記憶に残りそうではないですか。

本学では「仁愛・知識・技術」を講義や実習などを通して皆さんに身につけていただきます。皆さんは、それらを身につけるだけではなく、自身で目的と目標を定め、目的と目標の達成の仕方、学び方、生き方を学んでいってください。不安に思うことがあるかもしれませんが、青春時代には短期間に実に多くのことを吸収できます。教職員のバックアップもありますので、皆さんも東京医療学院大学において、出来る限り前向きにいろいろな事に挑戦し、実り豊かな学生生活を送り、成長する過程の中で、自己創造を図ってください。

入学生、保護者の皆さん、本日はご入学、誠におめでとうございました。

2019年4月2日
東京医療学院大学 学長 関根郁夫

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